四季一筆

徒然に。

皐月六日、富山を上から下から

きょうは魚津まで行った。
 
◇ ◇
 
立山・室堂からバスでどんどん高度を下げていくと、標高1500メートルくらいで耳が「ぽんっ」と鳴った。そこで気づいたのだが、標高が高いと耳抜きの「ぽんっ」が鳴らないのかもしれない。カミサンも同じようなことを言っていた。空気が希薄(下界の4分の3、700ヘクトパスカル台)なので、耳の鼓膜を動かすほど空気が濃密ではないのかもしれない。
 
東京で暮らしている私は、エレベーターで4階くらい上下移動すると耳抜きが必要になる。
 
◇ ◇
 
立山駅から水戸岡鋭治氏デザインの観光列車に偶然乗ることができたのは嬉しかった。列車で電鉄富山駅までの途中、それから富山駅から魚津駅までの途中、路線は何度も曲がるのだが、その間中、ずっと立山連峰が見下ろしてくれているのは不思議な気分だった。
 
東京だと、常に見える山というものがない。角を曲がるとすっかり景色が変わってしまうのが普通なのだが、富山平野を走っていると、いつでも東から南にかけての一角に、立山連峰が立っている。
 
◇ ◇


 
富山駅から「あいの風とやま鉄道」で魚津駅に向かった。蜃気楼目当てだったけど、その途中、田植え前の水を張った水田に、立山連峰が映って見えていて、これはこれで風情だった。きのう見下ろしたところを今度は見上げている。その山々が水田の水面(みなも)に逆さまに映っている。
 
まるで、陸地の蜃気楼のようだった。
 
昨夕の大谷ウォークは日没前の時刻で、西に低くなった太陽の光が、眼下に広がる富山平野の水田に反映して、まるで鏡をたくさん並べたように見えたと書いたが、その鏡のそばから山を見上げているわけだ。
 

◇ ◇
 
山を下りるころまでは晴れて、午後には気温が上がって富山湾の蜃気楼が見られると期待していたのだけど、魚津に着くころには立山連峰の上に広がった雲がこちらの上にもかかりはじめていた。
 
魚津駅近くの「プチトマト」という小さなイタリアンで食事をとっている間に、完全に曇ってしまって、結局のところ、残念ながら蜃気楼を見ることはできなかったのだ。だが、ああ、これがよくニュースとかでやっている蜃気楼の出る富山湾と、対岸の景色なんだな、と確認できた。(プチトマトのオムライス、美味いです。カルボナーラを食べた息子も大満足)
 
◇ ◇
 
海岸の「魚津埋没林博物館」でのんびりしすぎて時間が押してしまって、富山駅までタクシーで戻った。約25キロ、1万円也。ちと痛かったけど、若かりし頃は山岳部だったという運転手さんの興味深い話(富山・石川と福井の違いは…など)をきけたのは収穫か。それに、富山駅前の道路上から、すぐそばを走る路面電車(水戸岡印!)を見ることができたのは、息子にとって新鮮だったらしい。「なに、あれ、道路走ってる!」
 
◇ ◇
 
カミサンが9月の室堂で紅葉を見たいと言っているし、息子は冬の倒立する蜃気楼を見たいと言っている。だからたぶん、また富山に来るのだろう。
 
わたしは下山のバスから眺めた薬師岳に登りたいと思っているのだが、まあ、無理だろうな。室堂発の雄山から大汝山、そして富士の折立(立山三山)くらいはできるだろうか。ちなみにこのコースは、富山県の小学生の遠足コースらしい。それから白エビ(シラエビ)。めちゃくちゃ美味いです。もう、あれ食べちゃうと、スーパーとかで売ってるアマエビじゃ満足できない。
 
◇ ◇
 
あ〜、ちなみに、頭、痛かったです。下山したら治りました。高山病だった模様。夜は息苦しくて何度か目覚めた。水をよく飲むと少し楽かも。