四季一筆

徒然に。

皐月四日、目が回る

用事があって元麻布の辺りに行ってきた。とにかく都営線の地下鉄から地上に出ると地面が傾いていて、坂が多い。武蔵野台地の端に位置するため、侵食で高低が生じたらしい。
 
鳥居坂の交差点に向けて国際文化会館のほうから降りてきた車が、鼻先を路面にこすりつけるんじゃないか思われるくらい前のめりになって信号待ちをしているし、青信号になってそのまま暗闇坂に向かって交差点を抜けようとすると、腹を擦りそうな感じだし。
 
◇ ◇
 
駅を降りて本日の目的地まで20分弱歩いたのだが、とにかくアップダウンのある街だった。なんだか雰囲気が千代田区三番町の辺りに似ている気がした。きっと坂があるからだろう。道路に平らなところがない、そんな感じ。丸の内感覚でスッタカ、スッタカ歩くと疲れて顎が出そうだ。
 
◇ ◇
 
ニューヨークのツインタワーがなくなる二週間前くらいに、“行き当たりばっ旅”でカミサンと英国西部のウェールズに何日間か行ったことがある。
 
アバガベニーという町の、たしかハーフォード・ロード沿いだったと思うけど、B&Bに泊まったときだ。主人のご婦人は良い人だし、食事も美味しくて素敵だったのだけど、建物が古くて床が傾いているのに閉口した。
 
部屋の中に立つとクラクラして、歩くと真っすぐ歩けずに目が回って気持ち悪くなる。土地が平らなのに、床が傾いているという状況にたまらず、二泊の予定だったのを一泊にした。そして、翌日はバスでクリックハウェルまで行き、ベア・ホテルに泊まったのだった。
 
あのときは泊まるところなんて決めずに行って、町の観光案内所で宿を紹介してもらうという具合だったけど、若いからできたとカミサンと言っている。もうゴメンだな、次はツアーにしよう、て。
 
◇ ◇
 
元麻布からの帰り道に、小さなイタリア料理店で遅めの昼食をとった。メインのパスタも美味しかったけど、最初に出されたアーモンドとマッシュルームの冷たいスープがなかなか。店は明るく和やかな雰囲気でよかった。あら〜、この辺りというのは、こういう家族的な感じの街なのかなぁ、住んでもいいかなぁ、ああ、向かいのマンションの二階、丸見えで、空いてる雰囲気だよねぇ。
 
「さっき、不動産屋さんで見たけど、お家賃、49万だって」とカミサン。歩き回らなくても、聞いただけで顎が出て、目が回りそう。まあ、お高いけど、いい街です。