四季一筆

徒然に。

皐月三日、白髪、白ヒゲ

どうしてこんなにも白髪が伸びるのが早いんだろう、と思いながら、洗面所の鏡をのぞいていた。
 
気の所為とかではなくて、実際に伸びる速度が黒髪より早いらしい。そして太く真っ直ぐなので、ピンピンと立って目立つ。
 
◇ ◇
 
頭に白髪が生え始めたのは三十代後半で、もちろん最初から頭全体が真っ白になったわけではない。気づいたときには、よく見ると生え際の内側に白髪が何本かあるかなぁ、というくらいだったけど、四十代に入ると、ああ、白髪、あるね、と目を近づけなくてもわかるくらいになった。
 
五十手前くらいまでは髪の毛が長めだったので、髪の毛の重さや黒髪のボリュームで、白髪があるようには見えなかったけど、息子が小学生になるころから髪の毛が細くなり始めてボリュームダウンが始まり、生え際の後退と相まって長めの髪が似合わないと思ったので、床屋でお任せで短くしてもらうようになった。
 
もう、すっかりオッサンである。でも面倒がないので構わない。
 
短い髪の毛は快適なのだが、その所為で、白髪がピンコピンコと突っ立って目立つようになった。染める気はないけど、なんだか気になるといえば気になる。
 
◇ ◇
 
白髪と言えば、小学生の頃から鼻の中に白い鼻毛が一本生えていた。母親が、縁起がいいと言っては喜んでいた。鼻のなか見て喜んでるんだから、変な話だ。
 
顖会(しんえ)と呼ばれる額の上のほうにあるツボの辺りに、真っ赤な髪の毛が一本だけ生えていた。まるで磨いたばかりの銅線のように赤く光っていた。いつの間にかなくなっていたが、三十代まではあったと思う。最近気づいたのだが、息子の頭の同じ場所に赤毛が一本生えている。遺伝なのかな。
 
遺伝といえば、宝毛(たからげ)という色素の無い細くて長い毛が、普通はそんなものが生えないと思われる場所に生えたりするらしい。私は、両二の腕の外側に左右対称に生えていた。一見したところ気づかないくらいに細い。そのくせ5センチ位という長さ。これも遺伝らしいので、今後、息子の二の腕に注意してみようと思う。
 
◇ ◇
 
髪の毛の白髪はこのまま放っておいてもいいか、と思うのだが、ヒゲの白髪がなんとかならんかな、と。「髪」ではないから「白髭」か。白ヒゲ。
 
まだらに白い毛が混じっているので、ちょっと伸びてくると斑(まだら)にヒゲが生えているようで汚らしいのだ。白い毛の部分が、まるで毛が生えていないように見える。剃るのが面倒だからちょっと伸ばしておくか、とか思っても、二日も放置すると色が斑なもんだから、まるで顎に何か汚れがついているような感じになる。
 
◇ ◇
 
若い頃には、濃くて硬く、しかも成長速度の早いヒゲにうんざりしていたのだが、四十過ぎて「のばしてみるか、無精髭、けっこういいじゃん」とか思って試してみるのだけど、手入れをしようにも何も、白黒斑で全く様にならない。
 
ヒゲ、染めるかな。
……なんか、面倒。
ヒゲ生やすほど、偉くないし。