四季一筆

徒然に。

卯月三十日、はじめてのヒステリー

休日の朝、床に寝転がって本を読んでいた息子が、どうしたわけか60センチ角のクッションふたつを片手に持って、本を読みながらクッションを持った片腕だけを挙げてブン回したものだから、それが仏壇の花瓶に当たって転倒、ろうそく立てと一緒に落下、下においてあった本の上に切り花栄養剤の入った水がぶちまけられて、花瓶自体はそのまま床の上をごろごろごろ……
 
◇ ◇
 
花瓶が倒れたときにリンに当たり音がしたので、台所にいた私に異変がすぐに知れたのだけど、ほんとに、アホ男子ここに極まれり、という具合で私は怒髪天
 
「何やってるかっぁ!」とどやしつけたのはいいんだけど、そのあと私の声が出なくなった。喉の奥がこむら返りを起こしたように下に引っ張られている感じで、目をつぶって胸を掌で押さえて、ようやくぼつぼつと話せる状態。
 
ああ、これがヒステリーというやつか、と思った。
正しい症状名とかわからないが、いわゆる失声症というやつか、と。
 
◇ ◇
 
その後、本の水を払ったり拭いたり、切り花栄養剤入りだからシミになりやすいし、乾けばべたつくし、床と家具とは濡れ雑巾でよく拭いておいたのだけど、息子はティッシュひと箱全部使って、あたふたと拭いていた。ほんと、アホ男子だわ。
 
息子は小学5年生になって、学校では高学年に入り色々な係や委員会の仕事が義務化され、塾では本格的に基礎単元の仕上げが始まり、これまでのように近所のチビちゃん達と遊ぶなんてこともできなくなってきて、というか、同級生も、成長した近所のチビちゃん達もそもそも外で遊ばなくなってきていて、自分だけ何となく浮いているような気持ちで心もとないのだろう。
 
色々の変化と、適応するための疲労とで勉強が手につかなくなっているらしい息子は、落ち着かない。女の子のことが気になり始めたみたいだし。
 
◇ ◇
 
まもなく思春期で、テストステロンのおかげで脳幹の辺りが無闇に活発化するのだろうけど、こうやって何も意識しないままに事故ったり、他人に怪我させたりするんだろうなぁ、と、いまから心配だ。
 
日頃から「それをやったら、次、どうなる?」と質問しているのだが、そんな自分に対する質問とか懐疑とかが、いまの彼には入り込む余地なんて無いんだろう。自分を見つめ直すなんて、当分先なんだろうなぁ。
 
やれやれ。