四季一筆

徒然に。

卯月二十七日、やりたいこと

息子は大人になって一体何をやりたいのだろうか――なんて思うけど、「大人になって」という前提自体が有害なのかもしれないな。かといって、社会経験の皆無な息子に「何したい?」と訊ねれば、「チョコミントアイス食べて、マイクラやって、マイクラ動画見たい」と応えるに決まっている(というのも親の思い込みか?)。
 
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「やりたいこと」で検索すると「やりたいことがわからない」とか「やりたいことを見つける」とか「やりたいことをやれ」とか、ほんと、真砂のようにヒットするけど、それくらい「やりたいこと」が無いこと、今の自分が「やりたいこと」とは遠いところに居ると思っていること、そんな人たちが沢山いるんだなぁ、と。
 
もちろん、半世紀以上生きてきた私だって、いまだに自分が何をやりたいのかわかりません。ほんと、この半世紀、何してきたんだろ。
 
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小学生のころには「おまえは医者か弁護士になるんだ」と親から言い聞かされてきた。その理由というのが振るっていて、「座ったままで金持ちになれる」て、医者や弁護士が聞いたら怒るよ。
 
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中学高校に進むと成績の悪さが将来の進路とか射程を狭めてくるわけで、すると「金持ちになれる」が「稼げる」にランクダウン。でも、毎日往復で3時間以上の通学で時間を食われて(私立です)、世間の事なんてろくに知りもしない男子中高生が、将来の仕事のことなんてわかるわけない。だから自然、学校での授業の範囲での興味・関心に絞られてくる。
 
あ〜、物理とかいいかも。世界の成り立ちとか、すっごい興味ある。
 
とは思っても、「物理じゃ食えん」の親の一言で粉砕。結局、授業料が安く合格率90%以上という条件で、大学の学部や講義や卒業後進路実績なんてろくに理解することもなく受験して進学。まあ、そんなんじゃ、その後の人生もたかが知れてるね。
 
他にも「絵かきなんてヤクザな商売だ」とか「推薦入試なんて卑怯だ」とか色々とあった。別に、いまの状況とか人生とかを否定しているンじゃなくて、たぶん人生やり直しても、私は同じ選択をして、同じ場所にやってきているんだろうと思う。
 
じゃあ、そんなこと云うなら、一体どんな進路、どんな仕事、どんな人生がイイってんだよ? と訊く前に親はふたりとも死んじゃったけど、たぶん本当に訊けたとしても答えられなかったんだろうな、と、いまでは親になっている私は思うのだ。
 
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そんな人生、私の息子には歩ませたくないなぁ、と思うこの頃です。