四季一筆

徒然に。

卯月八日、理系離れと筆算

塾から渡されている算数の“毎日1枚ドリル”を、おおよそ1問30〜40秒ほどで解いている小5の息子なのだが、どうもケアレスミスが続く。というか、なかなかなおらない。息子自身も採点結果を見て「あれ? あれ? なんでココ間違えたかなぁ」と首を捻り続けている。
 
◇ ◇
 
ドリルの問題構成は、1ページのうち前半4割が四則演算に小数、分数がまぶしこんであるような問題。中盤にはいわゆる「○○算」という“技”的問題、最後の2割に図形問題が配置されている。
 
息子が間違うのは大概が前半4割で、計算量が多い図形問題でもポカミスが増える。調べてみると、筆算で横線が斜めになっていたり、文字の大きさがまちまちだったり、その所為で桁ズレが起きていたりしていた。
 
かつて親から嫌々やらされていた“進度にあわせてプリントをこなしていく勉強”ですっかり勉強嫌いになり、文字を書きなぐるようになった所為で、読み返した自分でも読み間違うような文字を書くクセがついてしまった。「文字を丁寧に書かないから、文字から逆襲されているんだね」と説明したら、出来るだけきれいに書くように努力を始めたけれども、計算ミスはなおらない。よくよく調べてみると、ミスの原因がわかってきた。
 
筆算での繰り上がり、繰り下がりでの1の加除忘れだ。
 
◇ ◇
 
半世紀前の小学校でも塾でも、私たちの場合は、筆算の繰り上がり、繰り下がりには、小さく「1」と書いたりしていた。繰り下がりなら数字を斜線で消して、1減らした数字に書き直す。これを「補助数字」というらしい。
 
この補助数字を、前述の“プリント勉強”では先生から禁止されていたのだそうだ。補助数字を書かないほうが計算に集中して短時間で計算できる、という理屈らしい。小学校の算数でも、息子によれば補助数字を書かないのだそうだ。
 
その補助数字を書かないことで、繰り上がり、繰り下がりを忘れて、誤答の原因となっているらしいことがわかってた。
 
◇ ◇
 
息子の普段の言動や解答行動を観察していると、何かの問題を解いているときでも目の前のことだけではなくて、そのちょっと先のこと、例えば次の項や次の小問のことを考えたりして、目の前の筆算に集中できていない瞬間があるらしい。そういうときに、繰り上がり、繰り下がりの瞬間があるとミスを踏む。
 
だったら、補助数字を書けばいいだろうに、その辺は頑なに拒んでいる。
 
システム屋の私からすると、人間がミスを犯すのは仕組みが間違っているからなので、だったらフェイルセイフを設ければいいじゃないかと思うわけだ。だから、補助数字を書いて、そんな繰り上がりを憶えておくなんて無駄な認知コストを支払うことも無かろう、と思うのだけど。
 
補助数字を書いてはいけない、なんて考えついたのは誰なんだろう。いまどき、補助数字を必要とする計算なんて実際には電卓で済ませることが多いわけで、繰り上がりを超短期記憶しておく必要なんて現実にはあり得ない気がする。それに、上流工程で必要になる推定とかは一桁か二桁の概算だ。補助数字なんて殆ど必要ない。
 
◇ ◇
 
そこで、気づいた。
 
ああ、これはきっと何かの陰謀なんだ、と。
きっと補助数字を書かないで不自然に記憶させることで、
 
・認知コストを無駄遣いさせて疲れさせることで、
・計算ミスを誘発して算数、数学、ひいては理系科目全般を嫌いにし、
・その結果として、理系の勢力を殺ぎ、文系の台頭を目指す!
 
という、文系官僚の策謀なんじゃないか、と。
その結果が「理系離れ」だ。
見事じゃないか。
 
……
 
じょーだん、ですよ。
 
 
▼【算数】筆算やくり上がりの1や、くり下がりの数字の書き方は?|ベネッセ教育情報サイト
http://benesse.jp/kyouiku/200711/20071120-33.html