四季一筆

徒然に。

弥生十七日、似る

息子と一緒に床屋に行って、髪を切ってもらった。息子の髪の毛を切るのは、幼児のころから理髪店でやってもらっている。
 
私自身は、小学校の高学年ころまで、父親が洗面所や浴室で切ってくれていたが、素人が切るから下手だし、被っている髪よけのケープがビニール製で蒸して暑くて、そんな状態で長時間じっと座っていないといけないから、正直なところ、嫌いだった。
 
大嫌いだった。
 
中学くらいになって理髪店に行って切ってもらえるようになって、ほっとした。
 
◇ ◇
 
自分の番が終わった息子は、店の iPadを借りて YouTubeなんて見ている。そんな息子を見ながら、私の頭を当たってくれていた店の主人が「息子さんと頭の形が似ていますね」と。へぇ、そんなもんですかねぇ。「ええ」。
 
しばしばひとから、親子ともよく似てますねと言われるのだけど、顔のパーツは似ていないと思う。息子は切れ長の一重まぶたに対し私は二重まぶたのタレ目、上がり眉毛と下がり眉毛、鼻だってカミサンに似ていると思う。でも、「洗濯機で洗ったら縮んだの?」とかからかわれるくらい似ているらしい。
 
頭の形だったのか。なるほど。
 
◇ ◇
 
その息子が、食事中に手の指先を口に突っ込んで何かやっている。「鶏肉のスジが歯の間に挟まった」。食べてれば、そのうちとれるかもしれないから、取るなら後にしな。
 
そういえば、ときどき爪楊枝で前歯をつついていたりするようだが、その辺が私の父親に似ている。父親は、食後には必ず爪楊枝を使っていた。前歯に隙間があって、そこに食べかすが残るのが気になると言っていた。
 
私は食後に爪楊枝を使うことはないのだが、孫に隔世遺伝したのだろうか。だとすると、死ぬ間際まで虫歯ひとつなく一本の歯も失われないのかもしれない。顎が細くて歯並びに不安があるけど、虫歯無しの健康な歯でいけなるなら、それは視力の良い目と同じに大切な財産だ。
 
◇ ◇
 
かくいう私はエナメル質形成不全で前歯がボコボコだし、近視に乱視で最近は老眼も入ってきている。
 
頭の形くらいは似ていても構わないけど、目と歯は似なくていいからナ。