四季一筆

徒然に。

弥生十三日、にほふがごとく今

先週までは、風呂上がりに寝間着を着ないでいると、体が冷えてしまう季節だった。それが終わろうとしている。風呂上がりに、扇風機の風に当たるのが心地よくなってきた。
 
◇ ◇
 
閉め切っていた廊下への扉を開き、玄関の内側にぶら下げた防寒カーテンを取り外す時季か。
 
日記を読み返すと、十年前の今頃にこんなことを書いていた。
 


「お前にはまだ早い」とか「そんなことは後回しでかまわない」とか周りから云われ続けて、気づいてみると40歳なんてとうに過ぎていて、私よりも若い世代がどんどん活躍していて、私の活躍する余地なんかなくなってしまったような気がする。いつの間にか心臓を悪くして、そうして、いつの間にか自分のやりたいことなんてできなくなってしまっていた。いや、自分のやりたいことがわからなくなってしまっていた。忘れてしまったのだろうか。
 
「アレをやるべき」「コレをやるべき」と云われ、そんなことを云っていた人たちはいつの間にかいなくなってしまって、取り残された私は、時間の平原で途方に暮れている。
 
小学生の息子が、最近、大人になったら何を仕事にしようか、と考えているらしい。「日本の給料&職業図鑑 Plus」(宝島社、2016)を読んで最初は宮大工で、いまは建築士らしい。Casa BRUTUSの特集をときどき眺めている。
 
◇ ◇
 
冬の冷たい風に首をすくめて寒気が通り過ぎるのを待っていると、やがて春がやって来て暖かくなる。風呂上がりには扇風機が必要になる。息子の足が再び臭くなり始めたので、靴下の浸け置き洗いと、靴へのミョウバン粉の使用を再開する。
 
足が臭くなってもいいから、暖かいうちに、いまのうちに、出来るだけ遠くまで走るがいい。路傍の漬物石になりかけている父である私は、そう思う。