四季一筆

徒然に。

如月二十五日、魔法瓶

息子の理科教材に「熱の伝わり方三種のうち、何が関係しているでしょう」のような問題が載っていた。
 
熱の伝わり方には、対流、伝導、放射の三種類があって、「対流」というのは火の上に手をかざすとモヤモヤとした熱い空気の流れが上に向かって昇っていくのを感じられるあれであり、「伝導」というのは熱湯を入れたマグカップをうっかりつかんでしまってあちちちちち……というやつであり、「放射」というのは太陽の光が顔に当たってぽかぽかと{暖かい|温かい}というやつだ。
 
いまのところ、この三種類以外の熱の伝わり方は見つかっていないんじゃないかな。
 
で、理科の練習問題では、「次の文章はそれぞれ、対流・伝導・放射のどれと関係が深いでしょうか」と問われていた。たとえば、「暖房を部屋の下に設置し、冷房は部屋の上に設置すると効率が良い」は「対流」が正解。温かい空気が上にのぼり、冷たい空気は下におりるから、勝手に風の流れが出来て部屋の中の温度が均されるからだ。
 
◇ ◇
 
次の問題に、魔法瓶が載っていた。魔法瓶は内部にガラスを使って真空の層を作り、(  )と(  )による熱の移動を防いでいる――の空欄を埋めろ、ということで、正解は「(伝導)と(対流)による熱の移動を防いでいる」のだそうだ。そしてガラスの裏側に銀メッキすることで(放射)による熱の移動も防いでいる。
 
ガラスの魔法瓶、いまでもあるんかいな。
 


大辞林 第三版の解説
まほうびん【魔法瓶】
 
中に入れた物質の温度を長時間保てるようにした瓶。内面に銀メッキを施したガラス、またはステンレス製の二重壁の間を真空にして伝導・対流・放射による熱の移動を防ぐようにしたもの。普通、口の狭い液体用のものをいう。保温瓶。ポット。ジャー。
 
魔法瓶(ウィキペディア):
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AD%94%E6%B3%95%E7%93%B6
 
◇ ◇
 
小学生の頃、遠足には水筒を肩から斜めにぶら下げていったもので、低学年のころはキャラクタ付きのプラ水筒だった。肩のベルトも安っぽいプラスティック製で、使っているうち横に亀裂が入ったりしていた。
 
レトロ水筒で検索:
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%83%AC%E3%83%88%E3%83%AD+%E6%B0%B4%E7%AD%92
 
そのうち、金属製のダルマ型水筒のようなものに変わったけど、魔法瓶の水筒は使わせてもらえなかった。「危ない」からだ。「落とすとガラスが割れて危ない」のだ。
 
◇ ◇
 
いま、ウチで使っている水筒類は全てステンレスボトルというやつで、落としたところで壊れない。外側がへこみはするだろうけど、基本性能が損なわれることは滅多にない。たぶん、普通に誰もが使っているやつだ。通勤カバンに小さいの入れてるでしょ? ガラスの魔法瓶なんて、いつ頃までウチで使っていただろうか。
 
ガラスの魔法瓶のことを「デュワー瓶」というらしい。英国人のデュワーという物理学者が1893年に発明しているそうだ。この「デュワー」というのに初めて出会ったのは、大友克洋の「AKIRA」に登場する「デュワー壁」だった。
 
◇ ◇
 
で、このデュワー瓶、つまりガラスの魔法瓶なんて現実的には使っていなくて、息子も見たことがないと言っている。不注意な息子のことだから、宿泊先の旅館やホテルの部屋の備品として未だに使われていることに気づいていないし、これからも気づくことなんてないだろうし……。
 
話違うけど「ピロピロ」が食卓の話題になって、知ってるかと訊ねたら「友達が持ってて知ってる、一回だけやらせてもらった」とか息子は言ってたけど、つまりはそういうことね、我々親世代とは全く違う世界に、息子は暮らしているんだね、と夫婦で妙に納得してしまった。
 
ピロピロ:吹き戻しの里(淡路島、体験教室あり)
http://www.fukimodosi.org/
 
駄菓子屋なんてないし、神社のお祭なんてのもそうそう行くものでもないし、かつては普通にあったものに触れることがなくなっているんだなぁ、その失くなった分は果たして何処かで補充されるとかしているのかなぁ、と。失くなっただけで経験が希薄に、虚弱になっているだけだったとしたら哀しいね。
 
忙しい忙しい、と急いでばかりだけど、そんなに急いで何処に向かってるンだろうね。明日も息子は、リュックにお茶のステンレスボトルを入れて、「がいん✷ がいん✷」とボトルをあちこちぶつけながら歩くのだろう。それはそれで、ひとつの経験ではあるのだけど。