四季一筆

徒然に。

水無月八日、夏至間近

 
あと十日ちょっとで夏至。一年で昼が一番長い日がやってくる。12月の冬至から半年で、日に日に昼の時間が伸びているはずで、だから、その最長の日がやってくるのだから気分的にも盛り上がって最高潮! て具合になるなら、日本でも「夏至祭」のようなことを大々的にやっているんだろうと思う。たとえば、バレンタインデーとかハロウィンとか、ああいった人為的な営為が商業的に盛り上がっているみたいに。
 
しかし、冬至もそうなんだが、天文現象による行事というのは、実際のところ、イマイチ盛り上がりに欠けている。最近でこそ、二十四節気とか七十二候とかが話題になっているみたいだけど、それで何かの売上が伸びているとか、あるんだろうか。レターセット? 手ぬぐい? 一筆箋?
 
◇ ◇
 
夏至が盛り上がらないのは、ひとつには梅雨の存在が日照や気分の邪魔をしているのがあるんだろうと思う。昼が長くなってます。さあ、一年で一番昼が長い日です! と言われても、暗い空からシトシトと降り続く雨にどんな顔して返事すればいいのかわからない。
 
さあ、一年で一番夜が長い日です。これから夏に向かって、昼の時間が伸び始めますよ――と言われたところで、師走の慌ただしさでそんなことどうでもいいし、直後にあるクリスマスと正月の輝きにかき消されている。
 
◇ ◇
 
まあ、ともかく、今年の夏至は6月21日にやってくる。そのおかげで日の出時刻が早くなっているのは確かだ。
 
先日、目覚まし時計が鳴ったので寝床から這い出して、アラームを止めて文字盤を見ると、時計の針が55分を指している。ああ、いけない、寝坊した、もうすぐ7時じゃないか、家族を起こさなきゃ――なんて慌ててトイレに入ったり洗面所に入ったり、湯沸かしのスイッチを入れたりなんて、毎朝の一連のドタバタを始め、戸棚の上の電波時計時報を打ったので「7時だよ」と寝床の家族に声がけをした。
 
気づくと、パソコンで鳴り始めるはずのストリーミング放送が始まっていなくて、あれ? ネット落ちたのかな、と思いながらパソコン画面の右下の時刻表示を見る(Windowsです)。すると、「6:01」。あらら、パソコンの内部時計が狂ったのか、どうしたんだ〜? と、カミサンが「おはよー」と起きてきたところで壁掛け時計を見ると、6時3分。
 
そこで、ようやく気がついた。
 
ああ、7時じゃないんだ。1時間早く、家族を起こしてしまった。
 
◇ ◇
 
アラームは5時55分と6時45分にセットしている。5時55分のアラームで目覚めた寝ぼけ頭が、時計の文字盤の長針だけ見て「7時前だ」と勘違いしたのだった。パソコンの内部時計が狂っていて、自分のほうが正しいのだと信じ込んでいた。
 
そして、自分の「7時前説」が絶対だと思いこんでいたのには、外的な理由があることに気づいた。
 
外がやたらに明るいのだ。
 
玄関の明かり採りから入ってくる朝日がやたらに明るいので、「7時前だ」という勘違いを決定的にしてしまった。
 
◇ ◇
 
これだけ明るくなると、一時間くらい早起きして、さっさと活動を始めたほうがいいような気がする。特に年寄りなんて早起きだし、ピーカンに晴れた朝に寝ているなんて勿体無いと思うだろう。だから、「夏時間」だなんてろくでも無いことを考えるのだろう。
 
◇ ◇
 
家族を一時間早く起こしてしまったわけだが、実は、その前夜に学校の宿題を終えられなかった息子は、早起きして作文の仕上げをするつもりだった。「明日は6時に起きて勉強する」と言っていたらしい。私はすっかりそんなこと忘れていたのだが、まあ、怪我の功名か。
 
息子は無事に清書して、登校していった。
 
 
 
 
 

水無月七日、最強の筆記具

 
油性のノック式ボールペンが、自分にとって最強の筆記具となって何年になるだろう。某文具メーカーのノック式の油性ボールペンを随分ながく使い続けている。もちろん、一本のボールペンを使い続けているのではない。パーカーのボールペンだったら、芯を交換しながら同じ軸を使い続けるだろうが、安いボールペンだから使い捨てだ。「捨て」というともったいない感じもするけど、軸は再生プラスティックらしいので、プラごみとして捨てている。再々生することだろう。
 
一本80円と安価なので、60円の替芯はあるみたいだけど使い捨てている。ハードな使い方をするので、インクを使い切る頃には、たいがい、軸が割れ始めているから。
 
◇ ◇
 
まずノック式である理由は、ペンを書く態勢で持ったままでノックして、ペン先の出し入れが出来るということ。これが大事。例えば右利きで、すぐに書けるようにペンを持ったまま、腕を曲げてペンの頭を肩とか胸とかに当ててやれば、ノックされる。いちいち右手の中で持ち替えて親指でノックすることはない。持ちかえることがないから取り落とすこともない。
 
キャップをはずすとか、軸をひねってペン先を出すとか、ペン先を引っ込めるときには軸の横を押さないといけないとか、そういう「たちどころに書きとめる」「素早く仕舞う」という目的に対する障害は、できるだけ少ないほうがいい。
 
◇ ◇
 
安価なのは大事だ。これがゲルインクだったり、滑り止めのラバーグリップだったりすると一本80円は難しくなる。安いのでまとめ買いして、家のあちこちに置いておく。カバンやリュックの中にも一本ずつ放り込んでおく。仕事場のペン立てには3本くらい立てておく。読みかけの本や、使っているノートごとに挟んでおく。安いから出来ることだ。
 
一本500円くらいのペンでこれをやると気兼ねしていけない。愛着だとか、使っているうちに味が出るとか、そういうことに興味はないから。すばやく書きつける。ただそれだけのためにある。愛着だとか味だとかは、自分の書きつける文字や言葉に見い出せばいい。
 
◇ ◇
 
安価な条件としての「ラバーグリップ無し」だが、「非ラバーグリップ」ということ自体が私には重要。時間が経つとベタベタしてくるラバーグリップが大嫌いで、この世から撲滅したいくらいだ。それに、服のポケットへの出し入れにラバーグリップはひっかかっていけない。その点、安価なノック式ボールペンはスムースに出し入れできる。ズボンのポケットに入れておいて落としてなくしても惜しくないし。
 
そうなのだ。ペン先が格納されるというのは、シャツやズボンのポケットに突っ込んで持ち歩くには必須要件なのだ。
 
◇ ◇
 
かつてはあれこれ試していた。6色ボールペンだとか、ひねるとペン先が出てくるお高いゲルインク型だとか、キャップ式だとか。
 
そもそも、なんで今さら「ペン」なんだよ、とも思われるかもしれない。スマホがあるのに、ペンとメモ帳とか、時代錯誤じゃん。
 
◇ ◇
 
「やっぱり情報はデジタルだよ」なんてカッコつけてSIIのA4ワープロとか、Visorのような PDAとかノートパソコンだとかを持ち歩いたりなんて20〜30代を送ったりした。だが、やはり素早さを求めると単機能やアナログに落ち着くのだ。
 
写真を取るのならコンデジだし、ICレコーダで会議を録音する。調べ物なら電子辞書。スマホの、スワイプして、ロックを解除して、アプリを呼び出して、ロゴマークが表示されて、ようやく起動して……なんてまどろっこしいことをしていると、いま思っていることを書きつけることができない。眼の前にあるものを撮る・録ることができない。
 
そもそも個人利用の“情報”だから、デジタル化して再利用する必要がないのだ。コピー&ペーストは、文字通りコピー機で複写して、糊で切り貼りしている。それが一番簡便なのだ。電気も電波も不要。ノートを開けばそこにある。そのノートにも、ノート専用のボールペンを挟んである。
 
◇ ◇
 
ということで、私はきょうも三菱鉛筆の SN-80というノック式油性ボールペンを持ち歩いている。
 
 
 
 
 

水無月六日、梅雨入り

とうとう東京にも梅雨が訪れた。これからひと月半、「忍」の一字で耐え忍べば光あふれる夏がやってくる! なんて思えたのは大学生までのことで、会社で働き始めたら何のことはない。梅雨だろうと夏だろうと、開くことのない窓の内側で、いや、そもそも窓すら無い部屋でプログラムを書き続けて、夏休みってなんだっけ、という毎日を過ごしてきた。
 
◇ ◇
 
去年の東京の梅雨入りは6月7日で、今年とほぼ同じ。去年の梅雨明けは7月6日で、低い雲が真っ白に輝きながら西に動いて梅雨明けとなった。今年はどんな梅雨明けだろうか。
 
梅雨がすっかり邪魔者になっている。
 
 
 
気象庁|平成30年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)
http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/baiu/sokuhou_baiu.html