四季一筆

徒然に。

卯月十五日、指先でひと払い

それだけで、文明のふたつや三つ、簡単に滅んでしまう。
 
直径1.2メートルのボールを考えてみた。1.2メートルというと小学校1年生男子の平均身長くらいで、まあざっくりと、運動会の大玉ころがしで使われる大玉くらいの大きさと思ってください。
 
◇ ◇
 
地球が、直径1.2メートルのボールだとしたらどうなんだろう、と。ちなみに実際の地球の直径は約1万2千km、12000kmね。一方の大玉は1.2メートル=120センチメートル=1200ミリメートル。
 
つまり、大玉の1ミリメートルが地球の10kmに相当するわけだ。わおっ。高度10万m=10kmを飛ぶジェット旅客機なんて、大玉の表面1ミリメートルを移動しているだけじゃないか! 虫だ、虫っ! 1ミリメートルなんて、シャーペンの芯2本分しかない。手近に定規があったら、1ミリメートルの目盛りの大きさ、じゃなくて小ささを確認してもらいたい。
 
国際宇宙ステーションの軌道が400kmくらいで、つまり大玉の上空4センチメートル。4センチメートルというと、私の手の指2本分の幅でしか無い。爪先でパチンと弾いたら宇宙の藻屑ですよ(すっかり神様気分なんだけど)。
 
◇ ◇
 
けさの朝食の時、息子が鼻歌で同じフレーズを繰り返して、なかなか先に進まない。訊いたら音楽の授業に、音楽室でビデオで聴かされたんだそうで、でもこの先を憶えてない――というので、YouTubeで楽曲を見つけて聴かせてやった。
 
アントニオ・ヴィヴァルディの「四季」より「春」の第一楽章。
 
あー、こんな季節、まさにこんな春にイタリアなんていいだろうなぁ、アペニン山脈の反対になるけど、トスカーナの春とかなぁ、なんて思いながら「トスカーナ」を「大辞林」で引いて、それから「エトルリア」→「小アジア」→「アナトリア」なんて流されて、食卓横の「新詳高等地図」(帝国書院)でトルコの辺りの地図を眺め始めてしまった。面積75万平方km。日本が約38万平方kmだから、日本をふたつ押し込めるくらいの広さだ。
 
◇ ◇
 
北には黒海、西にはエーゲ海ギリシアアドリア海、うむ、こうやって海岸伝いに行けばイタリアなんて近いもんだよなぁ、と思い、ふと目をページの下に向けると「シリア」「イラク」「イラン」とある。
 
そうか。こんなところにあるんだ。
 
そして地図の縮尺に目をやると「16 000 000」、つまり1600万分の1の地図で、人差し指の幅ひとつが約300km。
 
指先でスワイプするだけで、この辺、全滅するんだ。何も化学兵器とか、巡航ミサイルとか、空爆とかする必要なんて無い。
 
スワイプするだけ。
 
そうやって、きょうの「大玉・地球スケール」の想像が始まったのだった。
 
◇ ◇
 
この1ミリメートルの大気の底ででしか右往左往できないくせに、偉そうにしている人類って何様のつもりなんだろう。それとも、考えること、そしてその考えが宇宙の端をも超えられるというところに何かの意味というか使命というか、何かがあるのだろうか。
 
大玉の表面にくっついた砂粒よりも小さいくせに、偉そうにあーだこーだと言っている自分も含めて、人間て何さ、と思ってしまった。
 
ちなみに、太陽の寸法は地球の約百倍で、体積比は百万倍。とすると、運動会の大玉に対して、太陽は小学校の校庭からはみ出すくらいに巨大な直径120メートルになる。地球から月までの38万kmを現在の有人飛行技術では4日くらいかかるらしいが、このスピードで校庭からはみ出している巨大バルーン120メートルを端から端まで直線移動すると2週間かかることになる。
 
もう、人類、ハナクソですよ、いや、もう、花粉サイズ。巨大バルーンの端から端までなんて行き着けないんじゃないかと。
 
◇ ◇
 
ほんと、人類、何やってんだか。
 
私も日曜の朝から何計算してんだか。